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【第5回】「神旗争奪戦」「甲冑競馬」はいつから始まったの?

相馬野馬追(そうまののまおい)は1000年以上の歴史を誇る伝統行事ですが、その内容は時代とともに少しずつ進化を遂げてきました。かつて行われていたすべての行事が今でも同じ形で続けられているわけではありません。むしろ、時代に合わせて新しい要素が取り入れられることで、現在の相馬野馬追の姿が形作られているのです。


野馬追の進化:現代技術と行事の変化

昔の野馬追では、行事に参加する人々が馬を駆ける際、伝令や情報共有の手段として声をかけたり、旗やのろしを用いていました。しかし、現代では携帯電話や無線機、車などが使用されています。これは、伝統行事を維持しながらも安全性や効率性を高めるための進化といえます。

また、神旗争奪戦(しんきそうだつせん)や甲冑競馬(かっちゅうけいば)といった現在の野馬追を代表する競技も、昔から行われていたわけではありません。それぞれの競技が始まった背景には、社会の変化や人々の期待が関係しています。


神旗争奪戦の始まり

神旗争奪戦が始まったのは、約150年前、侍の時代が終わりを迎えた頃でした。それ以前の野馬追は、もっぱら馬を追い込んで捕まえる「野馬懸(のまかけ)」が中心でしたが、侍が活躍する場が減った時代、より観客が楽しめる要素としてこの勇壮な競技が生まれたのです。

競技の基本ルールは変わらず、神旗が花火の玉に詰められて打ち上げられ、武者たちが馬に乗りながらムチを使ってそれをつかみ取ります。この競技は、武者の技術と勇気を示すものであり、野馬追の見どころの一つとなっています。


甲冑競馬の誕生

甲冑競馬は神旗争奪戦よりもさらに新しく、終戦後の昭和23年(1949年)に始まりました。戦後の復興期に、相馬野馬追を「平和な馬事スポーツの祭典」として位置づけるために考案された競技です。騎馬武者が甲冑(よろい・かぶと)を身にまとい、競馬を行うこの競技は、伝統的な武士の姿を再現しながら、スポーツとしてのエンターテインメント性も備えています。

しかし、甲冑競馬が始まる前の1~2年は、リレー形式の競馬が試されていました。観客にとっては少し退屈だったようで、あまり評判が良くなかったと言われています。その反省をもとに、現在の甲冑競馬が生まれたのです。


進化し続ける伝統

相馬野馬追は、古くからの伝統を大切に守りながらも、新しい時代に合わせた形で発展してきました。その背景には、地域の人々の情熱と努力があります。この進化の過程を知ることで、野馬追がただの「古い祭り」ではなく、時代とともに歩む「生きた文化」であることがわかります。

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