相馬野馬追(そうまののまおい)の中心には、相馬妙見三社(相馬太田神社・相馬小高神社・相馬中村神社)の名前が記された「神旗(しんき)」があります。この神旗は横35センチ、長さ150センチほどの布で、太田神社は赤、小高神社は黄、中村神社は青と色分けされています。
昔、中村神社の神旗は白色でした。しかし、野馬追が梅雨時(7月初め)に行われていた時代、曇り空の下では白い旗が見えづらいことがありました。そこで、視認性を高めるために青色へと変わりました。この変更は、野馬追の進化と工夫の一例として語り継がれています。
神旗と「軍者(ぐんじゃ)」の役割
神旗は、ただの布ではありません。これは神聖な象徴であり、競技の中心です。「軍者」と呼ばれる役職のムチには、三妙見(赤・黄・白)の旗がつけられています。これは神旗との深いつながりを示すもので、祭り全体を支える役割を果たしています。
勇壮な「神旗争奪戦」
祭りの中でも特に注目を集めるのが、神旗争奪戦です。この行事では、花火の玉に神旗が詰められ、それが空高く打ち上げられます。花火が開くと、中から神旗が舞い落ちます。武者たちは馬に乗りながら、規定のムチを使ってその神旗を絡め取るのです。この競技では、手でつかむことや、特別なムチを使用することは禁じられています。
神旗をつかみ取った武者は、総大将が待つ本陣山(ほんじんやま)の頂上を目指して羊腸(ようちょう)の坂を駆け上がります。そして、山頂で獲得の報告を行い、神旗を納めるとともに、さまざまな褒賞(ほうしょう)が与えられます。
神旗争奪戦の褒賞
神旗争奪戦で勝利した武者には、次のような褒賞が贈られます。
- 神社の御札
獲得した神旗に記された神社(太田神社、小高神社、中村神社)の御札を受け取ります。たとえば、赤い神旗を勝ち取れば太田神社の御札が贈られます。 - 神旗のレプリカ
獲得した神旗の実物は本陣山に納められるため、武者たちは手元に残すことはできません。しかし、「神旗そのものが欲しい!」という声が多く寄せられたため、近年では同じ仕様のレプリカが贈呈されるようになりました。 - 地元企業からの副賞
地元企業や商店がスポンサーとなり、さまざまな副賞が用意されます。令和元年(2019年)には、「商品券、工業用扇風機、みそ汁&たまごスープのもと、日本酒2本、洗剤セット、ワンショルダーバッグ、オイルギフト、ミニ傘、キッチンペーパー、煎餅」などが贈られました。副賞の内容は毎年変わるため、何が贈られるのかも楽しみの一つです。