
馬を神様に捧げる理由:昔と今のつながり
相馬野馬追(そうまののまおい)では、毎年「野馬懸(のまかけ)」で馬を捕らえ、「上げ野馬の神事」を行います。この行事には、「馬を神様に捧げる」という深い意味があります。しかし、なぜ現代においても、このような伝統が続いているのでしょうか?
絵馬の起源:馬を捧げる文化
現代では、神社に願い事をするときに「絵馬」を奉納することが一般的です。絵馬に願い事を書き、それを神様に届けることで、願いが叶うように祈ります。しかし、この絵馬の文化は、実は奈良時代よりも前、実際の馬を神様に捧げていた習慣が起源とされています。
馬を捧げる理由
当時、馬は非常に貴重な存在でした。移動手段としてだけでなく、農作業や戦の際にも欠かせない、いわば「最高の贈り物」でした。馬を持つことができるのは権力を持ったごく一部の人々だけで、現代でいえば高級車や豪邸を神様に捧げるようなものでした。
このように、当時の人々は「自分たちが持つ最高のものを神様に捧げることで、願い事を叶えてもらえる」と信じていました。そのため、馬は神様に捧げられる象徴的な存在となったのです。
絵馬と野馬懸のつながり
やがて、生きた馬を捧げる習慣は、木で作られた馬や、馬の絵を描いた「絵馬」に簡略化されていきました。しかし、相馬野馬追では、今でも「野馬懸」と「上げ野馬の神事」を通じて、この古代からの文化を継承しています。
殿様の願い事:相馬地方の繁栄と人々の幸せ
「上げ野馬の神事」を通じて、歴代の殿様たちはどのような願い事をしたのでしょうか?もし、皆さんが殿様だったら、どのようなお願いをするでしょう?
殿様の願いとは
殿様にとっての幸せは、個人の幸福というよりも、相馬地方全体の安定と繁栄にありました。その願いは、大きく分けて次の二つでした:
- 相馬地方の繁栄
豊かな実りと経済の安定を願い、領地が平和であるように祈りました。 - 領民の安寧(あんねい)
領地に住む人々が心穏やかに、健康で豊かな生活を送れるように願いました。
これらの願いは、現代の私たちにも通じる普遍的な祈りと言えます。
現代の野馬追に込められた願い
現在の野馬追に出陣する人々も、同じような願いを胸に秘めています。相馬地方の繁栄と、そこで暮らす人々の幸せを祈り、騎馬武者たちは全力で行事に挑んでいます。
観客の皆さんには、ぜひその思いを理解し、「いってらっしゃい」「頑張って」「おかえりなさい」と声をかけていただけると嬉しいです。野馬追は、地域全体が一丸となって守り続けている行事なのです。