相馬野馬追には、約400騎にもなる騎馬武者が出陣します。その武者たちを束ねるのが「総大将」です。総大将は、むかし相馬地方を治めていた殿様の家系である「相馬家」の当主が務めるのがならわしです。ただし、相馬家の当主が参加できない年には、相馬家の御家老家(家臣の中でも特に位の高い家系)や相馬市長が代わりに務めます。
総大将は騎馬武者とは異なり、背中に大きな「母衣(ほろ)」という目立つ装備をつけています。この「母衣」は風船のようにふくらんでいて、緋色(あか)という鮮やかな色をしています。母衣の上にはさらに特徴的な飾りがついていて、これはその年の総大将がどの家系に属しているかを示しています。
母衣の飾りの意味
母衣の飾りには、次のような意味があります。
- 三つの扇(おうぎ)
相馬家の本家(ほんけ)が総大将を務めるときにつけられます。本家に属する人物は限られていて、現在この扇をつけることができるのは、相馬家の当主、そしてその息子だけです。 - 月と短冊(たんざく)
本家以外の総大将が務めるときにつけられます。たとえば、御家老家や市長が総大将になる場合、この飾りが用いられます。
母衣の飾りだけで、総大将の家系や役割がわかるのです。祭りを見に来たときには、この飾りをじっくり観察してみるのもおもしろいでしょう。
他の役職と母衣の色
総大将以外にも「母衣」をつけた役職が存在します。その中でも重要なのが、副大将(ふくだいしょう)と郷大将(ごうだいしょう)です。彼らはそれぞれ違う色の母衣を身につけています。たとえば、ある郷大将が黄色の母衣をつけていれば、別の郷大将は青い母衣をつけていることがあります。この色の違いは、それぞれの役割や所属する地域を示しているのです。
地元の人たちが教えてくれる
相馬野馬追の行列では、地元の高校生や役所の方々がマイクを使って解説をしてくれます。騎馬武者の歴史や甲冑、母衣の意味など、細かい情報をわかりやすく教えてくれるので、聞いているだけでとても楽しくなります。
「この人は相馬家の本家の総大将です」「こちらの郷大将は、今年の新しい馬を連れてきています」といった解説を聞くと、祭りがさらにおもしろく感じられるでしょう。